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 経営の道具箱

価値曲線


価値曲線とは

 顧客が製品やサービスを購入するのは、製品やサービスによって自らのニーズ(あるいは欲求)を満足させようとするからです。そして、通常の場合、そのニーズは複数の要素から構成されています。価格、機能、品質、デザイン、サービスといった要素がそうです。
 したがって、企業は顧客の要求に適合するように、複数の価値を組み合わせて製品やサービスを提供しなければなりません。

 
「価値曲線」は、顧客に提供する価値の全体を曲線で表すもので、横軸に競争要因(ニーズの要素)、縦軸にレベルをとって、要因毎にスコア化して線で結ぶことにより描くことができます。この価値曲線は、W・チャン・キムが、競争のない市場空間を見つけるための道具として提示したもので、競争のない市場(ブルー・オーシャン)を創造するための出発点ともいえるものです。

 当然ながら、レッド・オーシャン(血の海)で競争に明け暮れるよりも、競争のないブルー・オーシャンが創造できれば、それほど望ましいことはありません。ただし、ブルー・オーシャンを創造したからといっても、それで未来永劫安泰というわけにはいきません。ポーターが「5forces」で示したように「新規参入の脅威」は常に存在するのです。したがって、ブルー・オーシャンを創造したとしても、その市場で活動する限り、いずれ新規参入者が現れ、「競争の戦略」を考えるべき段階が訪れることを心しておかねばなりません。競争したくなければ、次々とブルー・オーシャンを創造していくしかないのです。

 なお、レッド・オーシャンとブルー・オーシャンの違いは下表のとおりです。

レッド・オーシャン(競争)戦略 ブルー・オーシャン(非競争)戦略
既存の市場空間で競争する 競争のない市場空間を切り開く
競合他社を打ち負かす 競争を無意味なものにする
価値とコストの間にトレードオフの関係が生まれる 価値を高めながらコストを押し下げる
差別化、低コスト、どちらかの戦略を選んで、企業活動すべてをそれに合わせる 差別化と低コストを共に追求し、その目的のためにすべての企業活動を推進する

                          (W・チャン・キム他著「ブルー・オーシャン戦略」を元に作成)



価値曲線の例
 次に、珈琲店を例にとって「価値曲線」を表してみます。

 かつての多くの喫茶店が赤い線で結んだ曲線で表される価値を提供していました。
 そのような市場を見て、D珈琲チェーンは、それまでにない市場を創造しました。香りや味といった基本的な品質を維持して、より安い価格で気軽に楽しめる珈琲ショップです。

 また、別の珈琲店は、気軽な楽しみや時間つぶしといった価値を除去し、その代わりに珈琲の品質、そしてサービスの品質に徹底的にこだわった店をオープンしました。

 ここで注意していただきたいのは、夫々が異なる曲線を描いていることです。異なる「価値曲線」を描くということは、従来とは異なる商品やサービスを提供するということです。ポーターは、「他者との違いのない戦略は戦略ではない」と述べました。ブルーオーシャンを目指す戦略は、競争のない市場を切り開くものですので、その意味ではポーターの「競争戦略」とは異なるものかもしれません。しかし、どの市場を選択するかが重要であるとする点では共通するものがあるのではないでしょうか。


 異なる「価値曲線」を描くということは、従来の価値要素のうち、どれを増やしてどれを減らすか、あるいは何を新たに追加して何を取り除くかを考えることでもあります。全てにわたって高い価値を提供しようとすれば、コストは当然アップします。それを避けるためには、「選択と集中」が欠かせません。ドラッカーは「万般に優れるということは万般に無能であるということだ」と述べました。この言葉は企業の卓越性について述べたものですが、企業が提供する価値についても当てはまるように思えます。コストアップに対処しつつ高い価値を提供するためには、何かを捨てる覚悟が必要なのです。

<喫茶店の価値曲線>

 なお、かつての多くの喫茶店は淘汰されてしまい、数少ない存在になっています。このことは、かつての喫茶店のような価値を提供するお店が少なくなったことを意味します。一方で、そのような価値を望む顧客も存在するかもしれません。昔と全く同じような喫茶店が復活しても成功するかどうかはわかりませんが、古いけれども新しい、そんな喫茶店ができたら面白いかもしれません。

 顧客を観察し、様々な仮説を立てて価値曲線を描いてみると、新たな市場が見えてくるに違いありません。



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